鉱物の化学実験(1)
(1) 炭酸塩鉱物の実験:
@ 大理石の実験: 石灰石、大理石、方解石、白亜などは、いずれも 炭酸カルシウム:
CaCO3 を主成分としている。石灰質を含む海洋性生物の死骸が大規模に堆積して集積し、白亜や石灰岩の地層ができ、それが造山運動の圧力やマグマの熱により変成して、大理石、方解石に再結晶する。
Ca が Sr に入れ替わったものは ストロンチアン石(SrCO3)、Ba
に入れ替わったものは 毒重石(BaCO3)、Mg に全部、あるいは、部分的に入れ替わったものは
菱苦土石(マグネサイト、MgCO3)、苦灰石(ドロマイト、白雲石、CaMg(CO3)2)、であるので、生物起源以外の大理石も大量に存在する。
(最近はあまり参考にされないが、)”クラーク数”によっても、明らかにカルシウムは地殻に多量に存在する元素である。(O、Si、Al、Fe、の次に、Ca(3.39%)) ただし、商業ベースに乗るためには、ある程度まとまって存在していなければならない。
石灰石をコークスと共に強熱すると、CO、CO2を放出して生石灰(CaO)となり、水和(消和)して
石灰(Ca(OH)2) が製造される。これは、モルタル、コンクリート、漆喰などの土木・建築材料の出発原料である。
A 孔雀石の実験: 装飾品の材料ともなる孔雀石の組成は、Cu2(OH)2CO3 であり、ろくしょう(=銅の青錆)と同様に 銅の塩基性炭酸塩であり、酸に簡単に溶けて銅イオン(U)となり 有毒である。 溶液も、沈殿も、硼砂球反応の色(酸化炎)も、2価の銅イオン(Cu2+)特有の青緑色。
B 菱マンガン鉱の実験: 菱マンガン鉱の組成はほぼ 炭酸マンガン(MnCO3)で
+2価でピンク色をしていて、塩酸などの鉱酸には加熱すると溶ける。(”菱”の付く鉱物、菱鉄鉱
FeCO3、菱亜鉛鉱 ZnCO3 などは炭酸塩であることを表す)
化学反応はマンガン特有であり、硼砂球は濃い紫色(酸化炎)。 また、菱マンガン鉱を粉末にして約0.1g取り、水酸化カリウム約0.2g(2〜3粒)、酸化剤として塩素酸カリウム約0.2gを ニッケルボート(40mm×30mm×0.3t のニッケル板(or ステンレス板)を曲げて作る)に乗せ、弱く赤熱する程度に加熱し、これを水に投入して溶かすと 生じたマンガン酸カリウム(K2MnO4)によって深緑色(マンガン酸イオン、MnO42−)を呈する。さらに、薄い硫酸を加えると、過マンガン酸イオン(MnO4−)に変わり、濃い赤紫色を呈する。(マンガンの確認)
(* 菱マンガン鉱の代わりに軟マンガン鉱(MnO2)を使っても同様)
(2) フッ化鉱物の実験:
@ 蛍石(ほたるいし、フローライト、硬度4)の実験: 蛍石はハロゲン化鉱物の一種であり、ほぼ純粋なフッ化カルシウム(CaF2)で、割れやすく、結晶は正八面体である。色は不純物による。 鉱石とともに加熱するとスラグの融点を下げ、流動性を増すのでこの名がある。(ただし、加熱により非常にはぜやすい。) 蛍光(紫外線を当てて光る)は希土類元素を含む場合であり、まれにしか見られない。
赤外線〜短波長紫外線という広い波長域の光(130nm〜8μm)を透過し、紫外線の短波長領域では石英よりもよく透過する。
蛍石はフッ素工業の原料である。また、製鉄の際 スラグの融点を下げ流動しやすくするのに用いられる。特に、アルミニウム精錬では、融点が高いアルミナの融材としての人造氷晶石を作る原料である。(アルミナの融点
2020℃ → 氷晶石に溶かしたアルミナの電解時の融点 約800℃) また、紫外線をよく通す光学材料として用いられる。
蛍石は水に不溶性で 化学的に安定であるが、熱濃硫酸と反応しフッ化水素が発生する。
CaF2 + H2SO4 → 2 HF ↑ + CaSO4
少量の粉砕した蛍石を 鉛皿(あるいは、テフロン皿)に入れ、濃硫酸を数滴注いであたためると、発生したフッ化水素が皿の上に乗せた硝子板と反応して腐食する。
SiO2 + 4 HF → SiF4 ↑ + 2 H2O
* 堆積物が岩石化する速さ:
堆積岩や化石は、進化論やビッグバン仮説にとって必要な、非常に長い年月をかけて形成されてきたという説が世の中に流布していますが、実は、驚くほど短い時間で、簡単に形成され得るものであることを知ることができます。
洞窟などにある鍾乳石は、地中の炭酸カルシウムが二酸化炭素を含む地下水によって炭酸水素カルシウム(Ca(HCO3)2)の形で溶け出し、外気にさらされCO2が抜け
再びCaCO3が析出することによってできます。(鍾乳石に閉じ込められた(間抜けな?)こうもり) 堆積岩である砂岩、礫岩、凝灰岩などは何万年もかかってできたのではなく、実は、数十年という非常に短い期間に固まってできるのです。(ハムやテディーベアの化石も!) このメカニズムも、水の存在下で、CO2による炭酸カルシウムの溶出、再固着によるところが大きくきいています。 また、海外で行なわれた実験では、石炭、石油なども、数時間〜数ヶ月の非常に短時間の内に生成可能です。
→ (3) 堆積物が岩石化する速さ: